僕と君と、ときどき電車

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「は~い、おはよう~!はいっ、おはよう!」

駅員のおじさんは今日も元気に挨拶してくれる。

「おはようございます…」

僕はそれに応じてボソボソっと挨拶をする。

それはまだ僕がトュルントュルンでピッチピチの20代だった約12年前の話である。

トュルントュルンと言っても毛量は今の1.5倍くらいあったし各ポジションを守っているヘアー達もボボボーボボーボボであった。

このトュルントュルンは肌の質感のことを表している。

まあ、毛量の話はどうでもいいのだが、20代の頃ってまだこういうフレンドリーな挨拶的なものが若干恥ずかしかったりする。

おじさんになった今となっては何が恥ずかしいのかさっぱり分からないのだが、若い男っていうのは沢山の人がいる前で大きな声を出すことを異常に嫌がる。

何か聞いてもだいたい聞こえるか聞こえないかの声で「あ~う~。あ~う~」くらいしか言わない。

会社では仕事なので仕方なしに声を出すのだが、プライベートではいかに声を出さないようにするかを心掛けながら過ごす。

病院の待合室でもこれは例外ではなく、自分の番が来た場合「〇〇さーん」という呼びかけにも無言で頷くだけで応じる。

軽く会釈はするのだが、できる限り声は出さないようにする。

出すとしても絞り出した透かしっ屁くらいの音量なのだ。

今は引越したので電車に乗ることはほとんど無くなってしまったのだが、当時は毎日電車で通勤していた。

というのもこの時はまだ新婚ホヤホヤで、お金を浮かすために駅近くのいわゆる県営住宅的な所に住んでいたのだ。

駅から会社までは電車で約20分くらい。通勤時は椅子に座れることはほぼ無かったのだが、帰りは結構ゆっくり座れた。

電車の椅子が暖かいと、何故か屁が出そうになるよね

広島の片田舎に住んでいるので、電車の本数も一日に数えるくらいしかなく、乗っている時間より待っている時間の方が長かった。

それでも当時持っていたウォークマンのおかげでそれなりに快適に待つことができたので、特に不満はなかった。

あと、セクシーな人を見つけたら窓ガラスの反射を利用してチラチラ見ていた。

男性諸君ならアルアルだろう。これが平日の僕の日課。

「おかえり~お疲れさん!」到着駅では駅員のおじさんが必ず声をかけてくれる。

僕は「こんばんは」と、朝より少し大きな音量で応える。帰りは周りにあまり人もいないので、謎の恥ずかしさも若干やわらいでいるのだ。

それでも「ただいま」と言えないのはまだまだ修行が足りないということだろう。

大きな駅ではこんな光景もないんだろうなと思いながら、駅員さんのフレンドリーさには少しありがたさも感じていた。

出そうだった屁も一旦引っ込む。いつも思うのだが、逆流したオナラって身体に悪かったりするのかな?

到着駅から当時の家までは歩いて3分。駅から道路を渡ったらすぐなので、立地条件は悪くない。

歩いてる時に一歩進むごとに屁が出ることあるよね。

「ただいま~」「おかえり~」新婚ホヤホヤとはいえ、うちはおかえりのキスとか行ってきますのキスなんかはしない。

僕は別にやるならやってもいいと思っているが、妻は別にそういうのをしたいタイプでは無いので、ぶっちゃけちょっと憧れていたりする。これも若さ故の過ちというものか…

ていうか、世の中の新婚さんって行ってきますのキスとかどのくらいの割合でやっているのだろうか?そんなフレンチなやつを頻繁に…逆にそれだけで済むのか?もうおっさんとおばさんなのだが、いつかチャレンジしてやろう…と、考えたり考えてなかったりしたりしなかったりする。

話が脱線してしまったので元に戻そう。時を戻そう。

家賃4万5000円程の部屋だったが、3DKで収納もわりと多く不便は感じなかった。唯一嫌だったのは風呂が小さかったことか。

新婚というのはいちいち細かい部分が気になったりするもので、妻は僕のマヨネーズの量とかにいちいち口を出してきた。

別にマヨラーでも何でもないのだが、マヨネーズを一周かけたくらいで文句を言われることに少々面倒くささは感じた。今はそんなことは無いんだけど。

同棲していれば話は違ったかもしれないが、そうでない場合、結婚というのは前日まで全く違う環境で生活していた他人が一緒に暮らすことである。

付き合っている時に見える部分というのは、その人の中身の氷山の一角であり、結婚してこんなはずじゃなかったということはよくある話。というか、ほとんどのカップルはそれを経験すると思うので、簡単に相手を見限るのはやめるべきだと思う。

時を重ねるとお互いにだいぶ角がとれてきますよ。さて、良いことを言ったところで時を戻そう…

「そろそろ寝ようか?」「うん、おやすみ~」

うちは23時頃にはだいたい寝るようにしていた。寝ようと思って目をつぶってみる…

・・・

・・・・

・・・・・

ゴオオオオオオオ!!ゴオオオオオオオ!!

パチッ(うるせーよ!!ゴオオオじゃねえよ!ンゴオオオじゃねえよ!)

騒音へのイライラで思わず屁が出そうになる。

家の前は結構車が通る道路で、壁がゆで卵の薄皮並に薄いのか路面の音がダイレクトに俺の鼓膜を直撃する!これはまさに脳天直撃セガサターン!!ひっきりなしに鼓膜を震わせるンゴオオオ!ゴオオオというノイズに僕は気が狂いそうになる。

前の道路、車いきスギィ!だが、こんなことはよくあること、(聞こえない聞こえない、心頭滅却すればノイズもまた森山直太朗)僕は精神を統一し、再び目を閉じる。

不思議と音にもだいぶ慣れてくる。23時30分、そろそろ眠れそうだ・・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・・zzZ

ガタンゴトン!ガタンゴトン!!ガタンゴトン!!!

パチッ(ぬおおおおおおぃ!バカか!あんたはバカか!?)

どうやら電車が通る音のようだ。一瞬焦ったが屁は出てなかった。

そうなのだ、この家は車の騒音(脳天直撃セガサターン)の他にも電車ノイズ(電車でGO!)という飛び道具まで飛び出して来る家なのだ。

もちろん妻も寝られず2人とも起きている状態なのだが、イライラを口に出すのはタブーである。

言葉というものは言霊と言われるように魂を宿しているので、口に出してしまうとますますそれに囚われてしまうンゴ。と、誰か偉い人が言ってたような気がする。

(うるせえな畜生!)僕は寝ぼけた頭でできるだけ冷静になれるよう心がける。そうだ電車は車ほど頻繁には通らない。僕はもう一度目をつぶった。この時の時間は0時30分・・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・zzZ

ボオオオオオ!ボオオオオオオオ!!

パチッ(ぬわああああん)

瞬獄殺!一瞬何が起こったのか分からなかった。

最後に鳴った奇妙なボボボーボ・ボーボボは船の音だった…(妻の屁の音じゃなくて本当に良かった)実はこの家、線路→道路→家→海という立地になっており、車、電車、船の三連星からジェットストリームアタックを喰らう所に位置していたのだ。

実家にいた時は親父にもぶたれたことないのに…とはいえ、こんなものにはさすがに慣れているので、対処法は分かっている。

僕達はすぐさま窓という窓にダンボールでバリケードを貼り、部屋と外の繋がりは完璧にシャットアウトした。エアコンのホースを通す穴的なものももちろん塞いだ。

だが、まあ全然意味無いよね。そもそも壁がゆで卵の薄皮並に薄いので一切効果無かった。

時計を見ると午前3時前、ジタバタするのを諦めた僕達はいつの間にか疲れて寝ていた。

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